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谷翔です。読書メモ以外はnoteで書くことにした→https://note.com/syosyotanisho10

幸福論、ラッセル、『星の王子様』の酒飲み、真理

幸福論に関する論文を読んでいたら、ラッセルの『幸福論』の引用があった。

「飲酒狂」のことをラッセルはこう言っている。

「人びとは、忘却するために飲むのである。……求めているのは、対象そのものを楽しむことではなく、忘却なのだ」(ラッセル『幸福論』安藤貞雄訳 岩波文庫 1991年 p186  五十嵐沙千子「哲学における幸福論 ~ヒルティ、アラン、ラッセル~」『倫理学』36巻 筑波大学倫理学研究会 2020年 p73より孫引き)

 

そういえば、『星の王子様』にも、そんなのがあった。『星の王子様』にはいくつも印象的な場面があるが、酒飲みの星での場面も僕にとってはその一つだ。いま手元に本がないので正確な文章は確かめられないが、たしかこんな感じだった。

……

王子様が「なぜ酒を飲むの?」と聞くと、

酒飲みは「忘れたいからだ」と答える。

王子様が「何を忘れたいの?」と聞くと、

酒飲みは「恥ずかしいことを」と答える。

王子様が「何が恥ずかしいの?」と聞くと、

酒飲みは「酒を飲むことが恥ずかしい」と答える。

……

これはけっこう衝撃的な会話だ。そして、本当にこれは真理を突いている、と思った。よく分からないけど、そう思った。とても深い絶望の気持ちと、なぜか少し心が軽くなったような感覚と、そして混乱、があった。

 

真理をあからさまに見ると、人は心身を揺さぶられる。

「真理」とは「それに出会った人が心身を揺さぶられるところのもの」である、と定義してもいいのではないか。内容なんてどうでもいい。現実との一致とかどうでもいい。言葉で表されるものでなくてもいい。内容がなくてもいい。モノでなくてもいい。そのへんの野良犬とか、風で飛ばされ遠ざかっていくビニール袋とか、隣人のちょっとした仕草とか、大事な人を待っているその時間とか、、、なんでもいい。ただ、ただ、揺さぶられるかどうか。