哲学、読書、演劇、思ったこと。

谷翔です。読書メモ以外はnoteで書くことにした→https://note.com/syosyotanisho10

本や映画など

東浩紀『存在論的、郵便的』新潮社 ちょっとメモ

東浩紀『存在論的、郵便的』新潮社 ちょっとメモ。 ヘーゲル、フッサール名前も精神も一緒に相続される一つのものが相続される キルケゴール精神は相続されない名前だけが相続される、ただし精神がない、という否定性としてのみ(たぶんこれが否定神学) デ…

ただ生命

サン・テグジュペリは郵便配達のパイロットだ。危険な仕事である。この日、彼は同僚と二人、不慮の事故によって砂漠の真ん中に降り立った。ここがどこなのか分からない。水も食料もほとんどない。彼らが生きているうちに仲間が助けに来る可能性はほぼない。…

レヴィナスの努力あるいは疲労における遺棄、断罪について

レヴィナスの『実存から実存者へ』で気になった箇所。レヴィナスは努力あるいは疲労・労苦について以下のように述べる。「自分の務めの上に身を屈めて労苦する人間の本性のうちには、遺棄が、見捨てられた者の境涯がある。まったく自由になされるとしても、…

〈ある〉(イリヤ)、恐怖

レヴィナスは、「〈ある〉がふっと触れること、それが恐怖だ」と言う。「〈ある〉」の原語は「il y a」である。英語なら「there is」、あるいは「it is rain」とかの「it is」。つまり、非人称、「私が」とか「彼が」などと行為の主体を指定しない、「誰が」…

責任、喜び、サン・テグジュペリ

著者サン・テグジュペリは飛行機で郵便配達をする仕事をしている。ある時、ギヨメという同僚が、大きな事故でもう死んだと思われていた中、数日後に生還した。著者は彼を讃えて書く。「彼の偉大さは、自分に責任を感ずるところにある、自分に対する、郵便物…

ザバァーと

佐野洋子は、幼稚園の時にブランコに乗っていたら隣の男の子がブランコを横にゆらして佐野のブランコにぶつけて来た、というエピソードを話したあと、男に対してどんな注文があるか、という話を続ける。その最後のあたり。「私やっぱり暴力というのは嫌だ。…

他人と幸運 人間の土地

フランス人の著者はパイロットで、ある時、クランクの故障により同僚たち数人とともにある海岸へ不時着した。そこは当時フランスの植民地で、以前同じ場所に不時着した他の同僚はその土地の人たちに虐殺されていた。すでに日が暮れており、修理には夜明けを…

『論理哲学論考』を読みながら思ったことを書く

ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』を読んだ。読み返してみる。僕がまず躓いた箇所はここだ。「1.13 論理空間の中にある諸事実、それが世界である。」「論理空間」ってなんやねん。自分にとって難しい哲学の本を読む時に大事なのは、分からない部分は分…

レヴィナス、ハイデガー、世界内で生きること

レヴィナスは、生きること(=実存すること)をリアルなこととして見ている。あるいは、生き続けることを。 レヴィナスは、「飢えと渇き」をリアルなものとして見ている。 お腹が空いて食べて生きていくことを、人間の基盤として見ている。世界内では人間は…

生きることを特別視するレヴィナス

レヴィナスの『実存から実存者へ』を読んでいる。レヴィナスは、「存在」と「生」を同一視している? レヴィナスは、生きることを特別視しすぎている、気がする。 生きることを特別視するから、「糧」とか言うのだと思う。レヴィナスが論敵として立てている…

腹が空くから食べてるだけよ

エマニュエル・レヴィナスの『実存から実存者へ』に、こんな文章があった。「もちろん私たちは食べるために生きているわけではないが、生きるために食べると言うのも正確ではない。私たちは腹が空くから食べるのだ。」(西谷修訳)要は、食べることは生きる…

畏敬の念

岩波文庫の『論理哲学論考』が面白い。ここには3人の人がいて、それぞれがそれぞれの考えを喋っている。ウィトゲンシュタインと、ラッセルと、野矢茂樹。ウィトゲンシュタインがまず喋り、それを読んだラッセルが喋り、そして野矢茂樹が彼らの間で喋る。野矢…

守ること

僕は、隠し事をするのが苦手だ。何でもかんでも話してしまう。秘密を持っていたくない。 隠し事をするということは、自分でそれを背負う、ということを含んでいる。 隠さずに全てを話すことは、楽だ。自分一人で何も背負わなくていい。全てを共有し、共同し…

「1/6」と「1/12」と「1/7」と「5年」と「1/2」と「4年」と

いま、姫野カオルコの小説『彼女は頭が悪いから』を読んでいる。 面白い。 それはさておき、小説の中で、こんな「問題」が出されている。引用する。「じゃね、いきますよ。優香ちゃんの一生は、1/6を少女として過ごします。1/12で何人かと付き合ったけど、そ…

はっきりしている時にだけ。。

スピノザは『神・人間及び人間の幸福に関する短論文』の最後に、「私がこれを書き与える友人たちに次のことを言う」と述べ、いくつかのことを書く。下はその中の一つ。 「我々の生存しているこの時代の性格の如何なるものかは諸君も知らなくはないのだから、…

スピノザにおいて明瞭判然たる認識が必要となる理由

スピノザは、認識の生じ方(作られ方)を4つに分けている。 1、伝聞から生ずる2、経験から生ずる3、理性(の推理)によって生ずる4、明瞭判然たる認識によって生ずる https://tani55sho44.hatenablog.com/entry/2021/02/22/135118 上の記事の中で僕は、「3の…

スピノザにおける名誉と恥辱についての覚書

スピノザは名誉と恥辱について言っている。名誉は、自分の行為が他人から賞讃されていると思った時に感じる喜び。恥辱は、自分の行為が他人から軽蔑されていると思った時に感じる悲しみ。(ちなみに、自分の行為のどんな利益が他人から賞讃され、どんな不利…

幸福論、ラッセル、『星の王子様』の酒飲み、真理

幸福論に関する論文を読んでいたら、ラッセルの『幸福論』の引用があった。 「飲酒狂」のことをラッセルはこう言っている。 「人びとは、忘却するために飲むのである。……求めているのは、対象そのものを楽しむことではなく、忘却なのだ」(ラッセル『幸福論…

スピノザの認識についての覚書

スピノザは、認識の生じ方(作られ方)について、述べている。1、伝聞から生ずる 2、経験から生ずる 3、理性(の推理)によって生ずる 4、明瞭判然たる認識によって生ずる例えば比例法則。 「第二の数に第三の数を乗じ第一の数で除すると、第二の数が第一の…

たまにはラーメンの話など。

この前、私用があって茨城県つくば市に行ってきました。せっかくなので、イチカワへも。グーグルマップの記録によると5年ぶりです。イチカワは煮干中華そばの店。 ラーメンデータベースで全国ランキング1位だった時期もある名店(現在は6位)。到着は朝9:30…

お金とセックスと期待

岸政彦がエッセイの中で、若い頃の親友が飛田の遊郭に通っていたことを書いている。その話の中で、売春宿に対する自分の思いをこう記している。「彼はここにしょっちゅう通っていた。私も何度も誘われたが、金を払って女とセックスすることが申し訳なくて、…

松田青子『持続可能な魂の利用』感想

松田青子の小説『持続可能な魂の利用』を読んだ。「見られる」こと。 「見る」こと。この本の冒頭には、「おじさん」から少女たちが見えなくなるという記述がある。 「おじさん」は「見る」側であった。 「少女」は「見られる」側であった。「見る」とは、「…

映画『リバーズ・エッジ』感想

【ネタバレあります】 …… …… …… 映画『リバーズ・エッジ』を観た。原作と比較しながら、感想を書く。 原作では「出口の無さ」が表れている。 対して、映画版には出口がある。 原作では、意外と、死が遠い。 死体が出てきたり、田島カンナが焼け死んだりする…

『遠くの空に消えた』感想

行定勲監督・脚本の映画『遠くの空に消えた』は、死者に捧げられる作品であると言える。なぜなら、この映画が徹底的に「無駄」なことを描いているからである。反対運動をどんなに頑張っても結局飛行場は建設されるし、 望遠鏡で流れ星を取れるわけはないし、…

傷つけないように

世界を、他者を傷つけないよう頑張ることで精一杯の人って、いるのかもな、と思った。 贈与することができるのは贈与されたことのある人だけだと仮定すると、世界から傷つけられてばかりいる(と感じている)人が、世界に何かを与えることはできない。愛を与…

岩野卓司『贈与論』メモ

以下の文章は、青土社から2019年に出版された岩野卓司の『贈与論』を読みながら僕が書いたメモである。 この本は僕の友人であるA氏が僕におすすめしてくれたもので、僕はA氏からこの本を借りて読んだ。それもあって、このメモを書くにあたって、このメモの読…

神の愛

神父「神は愛である」 男「その意味を教えてくれ。教えて、ください」 神父「あなたはこれまで、誰かを心底憎んだことがありますか。その人たちのために、心の底から祈れますか」 男「できません」 神父「それでいいのです。人間の心は弱いものです。憎むべ…

嫌われ松子の一生、愛、光

映画『嫌われ松子の一生』を観た。愛ってなんやろ。 愛ってなんやろ。ひとりぼっちで、ぼろぼろになって、自らの全てにおいて、生きている人たち。無意味に、生きる。 無意味に、死ぬ。 全て、生きる。生きる、だけ。 ただ、生きる。何のためでもなく、 誰の…

映画『ホーホケキョとなりの山田くん』 感想

高畑勲監督 『ホーホケキョとなりの山田くん』を鑑賞。 高畑勲監督作品で観たのは、たぶん、『平成狸合戦ぽんぽこ』と『おもひでぽろぽろ』だけだが、どちらもあまり好きではなかった記憶がある。どちらも、「外」を無視しているイメージ。「内」=「平穏な…

映画『溺れるナイフ』 感想

映画『溺れるナイフ』の感想小松菜奈好きの友人から、「面白さが分からなかったから、面白さを教えてほしい」みたいなことを言われて、観て、書いて、その友人に送ったもの。―――「溺れるナイフ」観た。 意外と面白く観れたなわしは。ああいう映画(?)のミ…