哲学、読書、演劇、思ったこと。

谷翔です。読書メモ以外はnoteで書くことにした→https://note.com/syosyotanisho10

『弟との話』『弟との出来事』

『弟との話』

則太(のりた):28歳男
明佳音(あかね):29歳女
恋人、付き合って2年半

聡太(そうた):22歳、則太の弟(社会人になったばかり)

部屋
2人で横に並んで座っている

則太「この前さ」
明佳音「ん?」
則太「弟来たじゃん」
明佳音「あ、来た。イケメンと噂の弟」
則太「うん」
明佳音「ほんとにイケメンだったね」
則太「あ、そう?」
明佳音「でもあのとき面白かった~」
則太「面白かった?」
明佳音「面白かった」
則太「何が面白かったの?」
明佳音「だって、則太、いつまでも私のこと紹介しないんだもん(笑)」
則太「あぁ」
明佳音「いつになったら喋るのかな~って」
則太「そっか、面白かったのか」
明佳音「名前すら言わなかったじゃん」
則太「言ったよ」
明佳音「言ったっけ?」
則太「うん」
明佳音「恥ずかしかったの?」
則太「いや、そういうわけでもないんだけど」
明佳音「弟くん、困ってたよね(笑)」
則太「うん」
明佳音「則太が喋らないから(笑)」
則太「え、明佳音が喋らないからでしょ」
明佳音「え~!? 則太でしょ!」
則太「そうかな」
明佳音「そうだよ」
則太「そうか」
明佳音「でも、なんか分かんないけど、ちょっと虚しい気持ちになったかも」
則太「え、そうなの?」
明佳音「うん」
則太「なんで?」
明佳音「うーん」
則太「虚しい気持ち?」
明佳音「そう」
則太「(黙る)」
明佳音「べつに、彼女って紹介してくれなかったのはいいんだけどさ。なんだろ」
則太「あ、明佳音が部屋いなかった時、彼女だっていうのは言ったよ」
明佳音「ふーん」
則太「(黙る)」
明佳音「なんだろうね」
則太「(黙る)」
明佳音「そんなもんなのか~、みたいな」
則太「そんなもんって?」
明佳音「そんなもん。言葉どおり」
則太「そんなもん」
明佳音「うん」
則太「ごめん」
明佳音「なんで謝るの(笑)」
則太「え、謝るとこじゃなかった?」
明佳音「なにそれ(笑)」
則太「(黙る)」
明佳音「まあいいよ、どうでも」
則太「うーん、そう?」
明佳音「うーん……、もう分かんない」
則太「(黙る)」
明佳音「そうだ! お詫びにイケメン弟との飲み会企画してよ」
則太「え、あ、うん、分かった」
明佳音「名前、なんて言ったっけ」
則太「弟の?」
明佳音「そう」
則太「えっと」
明佳音「(則太を見る)」
則太「(焦って)聡太」
明佳音「(微笑(本当に微かな)をしつつ前に向き直る)」

終わり

 


『弟との出来事』

則太(のりた):28歳男
明佳音(あかね):29歳女
恋人、付き合って2年半

聡太(そうた):22歳、則太の弟(社会人になったばかり)

則太の部屋
則太、ソワソワした様子
インターホンの音が鳴る
則太、玄関の方へ行く
則太と明佳音、部屋に入ってくる

則太「LINE見た?」
明佳音「ん? 見てない(スマートホンをバッグから取り出して確認する)」
則太「今から弟が来るって」
明佳音「へー! あのイケメンって言ってた?」
則太「え、あ、うん」
明佳音「えー、楽しみー」
則太「どうしよう」
明佳音「あ、電話もくれてたんだ」
則太「あ、うん」
明佳音「なんでそんなソワソワしてるの(笑)」
則太「いや、どうすればいいのかと思って」
明佳音「どうすればいいって?(テーブルの上にスマートホンを置く)」

インターホンの音

則太・明佳音「あ」

則太、玄関の方へ行く

聡太「(則太と一緒に部屋に入りながら)おー、けっこう綺麗じゃん。(明佳音がいることに気づき)あ、どーもー」
明佳音「あ、どうも」
3人「(黙る)」
聡太「(様子をうかがいつつ)はじめまして。則太の弟の聡太っていいます」
明佳音「あ、はじめましてー」
3人「(黙る)」
則太「ひさしぶり」
聡太「え? あぁ、ひさしぶり」
則太「どうした? いきなり」
聡太「えぇと、ゴールデンウィークに旅行してさ。これ、お土産(手渡す)」
則太「あぁ、ありがと」
聡太「えっと」

テーブルの上にある明佳音のスマートホンが振動し始める
明佳音、スマートホンを取らない

聡太「あの、電話じゃないですか?」
明佳音「(微笑む)」

スマートホンが振動し続ける

則太「えぇと、柴原明佳音さん、こちら」

スマートホンの振動が止まる

聡太「あ、柴原さん、はじめまして」
明佳音「はじめまして、柴原明佳音です」
聡太「兄がいつもお世話になっております」
明佳音「いえ、こちらこそいつもお世話になってます」
則太「旅行って、どこ行ってきたんだ?」
聡太「へ?」
則太「どこに旅行(行ってきたんだ?)」

明佳音のスマートホンが振動し始める

明佳音「(スマートホンを確認し)ちょっと出てきますね」

明佳音、部屋から出る

聡太「ちょっと! だれ!」
則太「言ったじゃん、柴原明佳音さんって」
聡太「いや名前だけじゃ分かんないだろ! 彼女?」
則太「うん、まあ」
聡太「それを言えよ!」
則太「(黙る)」
聡太「明佳音さん、紹介されるの待ってたんじゃないの?」
則太「(黙る)」
聡太「はぁ。怖かった」
則太「何が?」
聡太「何がって! あの空気!」
則太「あぁ、空気ね」
聡太「は?」
則太「いや、明佳音が怖かったのかと(思って)」

明佳音、部屋に戻ってくる

明佳音「(部屋に入ってきながら)友達が彼氏と別れちゃったからこれから慰めパーティーやるんだって。ちょっと行ってこなきゃ」
則太「あぁ、分かった」
明佳音「聡太くんも、ごめんね」
聡太「いえいえ! 僕もいきなり来てしまってごめんなさい」
明佳音「また来てね。今度はゆっくりご飯とか」
聡太「はい! ぜひ!」
明佳音「じゃあ」

明佳音、部屋から出ていく

聡太「大事にしてあげなよ?」
則太「え?」
聡太「明佳音さんのこと、大事にしてあげなよ?」
則太「大事にしてないかな」
聡太「いや知らねーけど」

終わり