哲学、読書、演劇、思ったこと。

谷翔です。読書メモ以外はnoteで書くことにした→https://note.com/syosyotanisho10

『出発地』

『出発地』

●登場人物
・父
・母
・子(中学生、性別なんでもよい)

●場所
玄関(玄関前廊下に階段とトイレの扉がある構造の家)


子が階段を降りてきてトイレに入る。
そのあと父と母が玄関に来る。
父が靴を履く。

父「じゃあ行ってきます」
母「(カバンを渡して)行ってらっしゃい」
父「(扉に手をかける)」
母「ねえ」
父「ん?」
母「[子]、今日も下りてこない」
父「あ。うん」
母「自分の部屋から出てこないの」
父「そうか」
母「うん」
父「(黙る)」
母「何考えてるんだろう、[子]」
父「(黙る)」
母「(黙る)」
父「うーん」
母「(黙る)」
父「どうなんだろうな」
母「うん」
父「(黙る)」
母「(黙る)」
父「じゃあ行ってきます」
母「ねえ」
父「ん?」
母「どうでもいいの? [子]のこと」
父「(黙る)」
母「なんで黙るの?」
父「どうでもよくはないよ」
母「じゃあもっと真剣に考えてよ!」
父「(黙る)」
母「相談も全然乗ってくれない」
父「(黙る)」
母「話ぐらい聞いてよ!」
父「(黙る)」
母「何か言って」
父「思春期だからかな。うん」
母「(黙る)」
父「じゃあ行ってきます」
母「ねえ!」
父「ん、どうした」
母「どうしたって」
父「(腕時計を見る)」
母「電車は大丈夫でしょ。いつも3本早い電車に合わせて出てるんだから」
父「う、うん」

子がトイレから出てくる。
母、父、気づく。

母「あ、トイレにいたの? [子]、おはよう」
子「その人に何言っても意味ないよ」
母「え? その人って」
子「その人。その男」
母「お父さんでしょ?」
子「その人、ほんとにどうでもいいんだよ」
母「そんなことない。お父さんは[子]のこと考えてるよ」
子「(笑)、そんなわけないよ。だってほら、今も、電車に遅れそうって顔してるじゃん」
母「(父を見る)」
父「(黙る)」
子「別にいいと思うよ。他人のことなんだから。どうでもいいのが普通だよ」
母「他人って。お父さんでしょ?」
子「他人だよ。(母に向かって)あんたも他人だからね」
母「なんで? なんでそんなこと言うの?」
子「他人だから」
父「じゃあ、行ってきます」
母「(父を見る)」
父「(扉を開けて出ていく)」
母「(黙る)」
子「(笑)」
母「(黙る)」
子「あの人、いいね」
母「(黙る)」
子「(階段を上がろうとする)」
母「(子に駆け寄って)お母さんだけは味方だからね?」
子「(黙る)」
母「大丈夫だからね? ね?」
子「(黙る)」
母「(子を見つめる)」
子「まじで気持ち悪い」
母「(黙る)」

子、階段を上がる。
母、1人取り残される。

終わり