いま、姫野カオルコの小説『彼女は頭が悪いから』を読んでいる。
面白い。
それはさておき、小説の中で、こんな「問題」が出されている。引用する。
「じゃね、いきますよ。優香ちゃんの一生は、1/6を少女として過ごします。1/12で何人かと付き合ったけど、そのあと1/7はカレ無しで過ごして、やっと結婚をして、5年後に子供が生まれ、その子は優香ちゃんより4年早く、かなしいことに優香ちゃんの命の1/2で死んでしまうとします。こんな人生だと優香ちゃんは何歳まで行きますか?」
これを、僕は解いてみた。で、解けた。で、「この問題を、数学が苦手だという自己意識を持っている中学生に教えるとしたら、僕はどのようにするだろうか?」と考えた。
まず、図を書く。
優香の生きた年数が、この図の端から端までだ。
そして、少女として過ごすのがこの全体の「1/6」、そのあと「1/12」、そして「1/7」、それから「5年」があって子供が生まれて、優香が死ぬ4年前にその子供は死ぬ。だから一番右端は「4年」、そして、「5年」と「4年」のあいだ(子供が生きた年数)は優香の生きる年数の半分、つまり、「1/2」。
この「1/6」、「1/12」、「1/7」、「5年」、「1/2」、「4年」を全て足した数が優香の生きた年数だ。
1/6+1/12+1/7+5年+1/2+4年=優香の生きた年数
5年と4年は足してしまおう。5+4で9。9年。9年という数字は今はっきりとしている。
で、分からないのは図の中のこの部分だ。
「なんぶんのなに」は、全体の内の「なんぶんのなに」というだけであって、具体的に「なん年」なのかは今のところ分かっていない。つまり、「1/6」と「1/12」と「1/7」と「1/2」を全部足した年数が具体的に何年なのかは分かっていない。
で、優香の生きた年数も分かっていない。
ここまで考えて、「さて、どうする」と思った。ここからどうやって教えよう。
で、ハッとした。
「ここからは自分でやってみて」でいい。
もしかすると、「数学が苦手だという自己意識を持っている中学生」は最初、途方に暮れるかもしれない。でも、待ってみよう。
たぶん、xとかをこちらから持ち出してはいけない。
むしろ、この問題を解く中で、その「中学生自身がxを発見する」ことができるのではないか、と思う。この問題を通じて、「そうか、xってこれのことなのか」「なるほど、xを使うとたしかに便利だ」と「感じる」ことができるのではないか。
学ぶというのは、そういうことだ。というか、そういうことでなければ、学ぶことに意味はないだろう。
人に何かを学んで欲しいと思う時、何かを知ってほしいと思う時、「教える」側にできる最も重要なことは、「待つ」ことかもしれない(なんてことはすでにさんざん言われてきているんだけど)。
……
……
(なぜ、僕はいきなりこんな記事を書きたいと思ったのだろう?)